中学受験の学校選びをしていると、「条件だけ見れば、かなりいい学校なんだけどな」という学校が出てくる。
家から近い。大学付属である。校舎もきれい。進学実績も申し分ない。
親からすると「ここでいいじゃないか」と思うのだが、実際に学校へ行ってみると、子どもの反応はまったく違ったりする。
我が家にとって、その一つが明治大学付属中野中学校、通称・明大中野である。
父親である僕からすれば、今でも明大中野は「全然あり」だと思っている。
それでも、我が家では今のところ受験する可能性は低そうである。
理由は意外と単純だ。
息子が珍しく「自分には合わない」と言ったからである。
明大中野の文化祭へ
明大中野の文化祭へ行ったのは、確か息子が小学5年生のころだった。
当時、僕は明大中野にかなり魅力を感じていた。
まず、我が家から比較的近い。中学校から高校まで6年間通うことを考えると、通学時間は非常に重要である。いくら魅力的な学校でも、毎朝長時間電車に乗って通うとなると、それだけで体力を使う。
その点、家から近いというのは親としてかなり魅力的だった。
そしてもう一つ。
明治大学の付属校である。
大学受験まで含めて考えると、これも大きい。
「家から近くて、明治大学の付属。これはかなりいいんじゃないか」
そんな気持ちで文化祭へ向かった記憶がある。
明大中野とは
活気ある男子校
明大中野は東京都中野区にある男子校で、学校法人中野学園が運営する明治大学の付属中学・高校である。
校訓は「質実剛毅・協同自治」。勉強だけに偏るのではなく、部活動を含めた学校生活全体を通して「知・徳・体」を育て、文武両道を目指す教育を掲げている。
実際に文化祭へ行った僕の印象も、まさにそんな感じだった。
学校には活気がある。生徒たちも元気である。運動部も盛んな印象を受けた。いい意味で男子校らしいエネルギーを感じた。
校舎も新しく、息子自身もその場では「いい学校だね」というようなことを言っていた。
僕も普通に「やっぱり明大中野、いいじゃないか」と思っていた。
明大への推薦制度
明大中野の大きな魅力の一つが、明治大学への推薦制度である。
2026年3月卒業生404人のうち、明治大学の付属高校推薦入試合格者は328人。推薦率は81.2%で、実際に324人が推薦で明治大学へ進学している。
8割以上が明治大学へ推薦で進めるというのは、十分に大きなメリットだと思う。
ただし、全員が自動的に明治大学へ進学できるわけではない。高校1〜3年の学年総合成績に加え、高2で1回、高3で2回実施される明治大学推薦テストの成績なども加味して推薦順位が決まる。
息子は「合わない」
文化祭から帰ってきたあと、息子が言った。
「やっぱり、僕には合わないと思う」
少し意外だった。現地では嫌そうな様子はなかったからである。
理由を聞いてみると、「生徒のタイプが自分とは違う気がする」というようなことを言っていた。
小学5年生である。学校の教育方針を分析して、論理的に比較していたわけではないだろう。
それでも何となく、「自分がここに通っている姿が想像できない」という感覚があったのかもしれない。
僕も改めて思い返してみると、少し分かる気がした。
息子はどちらかというと運動が得意なタイプではない。
一方、文化祭で見た明大中野は、とにかく活気があり、元気な男子が多い印象だった。
もちろん、明大中野に運動が得意な生徒しかいないわけではない。そんな単純な話ではない。
ただ、学校には確かに「空気」というものがある。
偏差値表には書いていないし、学校案内にも数字としては載っていない。しかし実際にその場所へ行くと、
「なんとなく自分に合いそう」
「なんとなく違う気がする」
というものを感じることがある。
息子はそれを感じたのかもしれない。
父親には魅力的
ここは誤解のないように書いておきたい。
僕自身は今でも、明大中野はかなりいい学校だと思っている。
家から近い。校舎もきれい。学校に活気がある。そして明治大学への推薦制度もある。
父親としては今でも「全然あり」である。
だからこそ、息子が「合わない」と言ったことは、少し意外でもあった。
しかし実際に6年間通うのは僕ではない。
息子である。
明大明治との違い
唯一の直系付属校
明大中野について考えるとき、我が家で比較対象になったのが明治大学付属明治中学校・高等学校、いわゆる明大明治である。
明大明治は調布市にある共学校で、学校法人明治大学が設置する唯一の直系付属校である。
1912年に開校した長い歴史を持ち、2008年に調布へ移転すると同時に男女共学となった。校訓は「質実剛健」「独立自治」である。
内部進学を比較
大学への接続という意味では、直系付属校ならではの強さがある。
明大明治では、一定の推薦基準を満たせば明治大学への推薦資格を得られ、実績としても毎年約9割が明治大学へ進学している。
もちろん、明大明治も「入ったら何もしなくていい」という学校ではない。学校自身も、進級・推薦のためには一定の基準を満たす必要があることを示している。
ただ我が家からすると、「せっかく大学付属を選ぶのであれば、大学付属のメリットをより強く享受できる学校のほうがいいのではないか」という考えはある。
その点では、妻は明大中野より明大明治の制度のほうに魅力を感じているようである。
これは明大中野が良い、悪いという話ではない。学校選びで何を重視するかの違いである。
2月2日は巣鴨へ
さらに6年生になった現在、明大中野を受験する可能性が低くなっているもう一つの理由がある。
息子自身が、「2月2日は巣鴨を受けたい」と言っているのである。
明大中野の2027年度中学入試は、第1回が2月2日、第2回が2月4日である。
一方、巣鴨中学校は2026年度入試では第Ⅱ期が2月2日、第Ⅲ期が2月4日だった。2027年度については正式な募集要項で改めて確認する必要があるが、もし同じ日程が続けば、2月2日だけでなく2月4日まで明大中野と巣鴨が重なる。
なかなか見事なかぶり方である。
ただ、現時点で我が家はかなり巣鴨に傾いている。
そして意外なことに、息子だけでなく僕自身も巣鴨に惹かれている。
巣鴨とは
伝統の男子進学校
巣鴨中学校・高等学校は東京都豊島区にある男子校で、1910年に創立された100年以上の歴史を持つ伝統校である。
巣鴨といえば、「硬教育」という言葉を聞いたことがある人も多いと思う。
学校はこれを「努力主義」と説明している。ただ単に厳しくするということではなく、自分の可能性を信じ、努力を続けられる人間を育てるという考え方である。
中高6年間の教育を通じて、大学進学だけでなく、人間力や国際性まで育てることを目指している。
そして巣鴨の特徴の一つが、学校行事の多さである。文化祭の「巣園祭」はもちろん、大菩薩峠越え強歩大会など、巣鴨ならではの伝統行事もある。
このあたりを息子はかなり気に入っているようだ。
「行事がたくさんあるのがいい」
と言っている。
6年間を過ごすのだから、これは案外重要なことかもしれない。
変わろうとする学校
巣鴨について調べていると、「昔に比べて東大合格者が減った」「以前ほどの勢いはない」といった評価を目にすることがある。
確かに長い期間で見れば、大学合格実績には変化がある。
ただ、実際に学校を訪れて僕が感じたのは、「昔ながらの伝統を残しながら、今の時代に合わせようとしている学校なのではないか」ということである。
質実剛健。努力することを大切にする。
そうした昔からの巣鴨らしさは残っている。
一方で、ただ昔のやり方をそのまま守ろうとしている学校にも見えなかった。
これは完全に僕個人の印象なのだが、そのバランスが妙に魅力的に映った。
巣鴨に惹かれた理由
巣鴨で印象に残ったものの一つが、校長先生の話である。
これがなぜか面白かった。
学校説明会に何校も行っていると、当然ながら校長先生の話も何度も聞くことになる。もちろんどの学校も立派な話をされる。
ただ、正直にいえば、すべての話が記憶に残るわけではない。
その中で巣鴨の校長先生の話は、不思議と印象に残った。
「この学校、なんかいいな」
と思った。
学校を選ぶときに、こういう理屈では説明しにくい感覚も意外と重要なのかもしれない。
文化祭で巣鴨を訪れたときには、校舎の雰囲気も気に入った。
建物自体は新しく、かなりモダンである。
ところが教室の中へ入ると、木の質感が随所に感じられる。
新しい校舎によくある、白くてピカピカした無機質な感じとは少し違った。
現代的な設備の中に、木材の柔らかな質感と伝統校らしい落ち着きが自然に溶け込んでいる。
そんな空間だった。
新しい。でも冷たくない。むしろどこか温かい。
これは完全に僕の好みであるが、妙に居心地がよかった。
子どもの直感を尊重
ここまで書くと、「明大中野より巣鴨のほうがいい」と言いたい記事のように見えるかもしれない。
そうではない。
むしろ僕自身だけで選ぶのであれば、明大中野もかなり魅力的である。
家から近い。明治大学への推薦制度がある。校舎もきれい。活気もある。
運動や部活動が好きで、元気な男子校の雰囲気が好きな子なら、かなり楽しい6年間になるのではないかと思う。
一方の巣鴨は大学付属ではない。6年後には大学受験が待っている。
それでも息子は巣鴨のほうに惹かれている。
そして僕自身も、実際に学校へ行ってみると、「確かにこっちのほうが息子には合っているかもしれない」と思うようになった。
我が家はいろいろな学校を見てきた。
説明会にも行った。文化祭にも行った。
その中で、息子が学校をはっきり、「自分には合わない」と言うことは、それほど多くない。
だからこそ、明大中野についてはその感覚を尊重したいと思っている。
父親である僕からすると、「近いし、明治だし、いいじゃない」と言いたくなる。
親にとっては非常に分かりやすい魅力があるからだ。
しかし実際に6年間学校へ通うのは僕ではない。
息子である。
学校選びは相性
中学受験を始めたころは、偏差値、大学合格実績、大学付属かどうか、通学時間。そうした条件を並べれば、学校はある程度選べると思っていた。
もちろん、今でもそれらは重要である。
しかし実際にいろいろな学校へ足を運んでみると、それだけでは決まらないことがよく分かる。
生徒たちの表情。廊下の雰囲気。先生と生徒の距離感。文化祭の空気。教室に入ったときの感覚。
そして、「ここで6年間過ごしている自分を想像できるか」という子ども自身の感覚。
こうしたものは、学校案内のスペック表には載っていない。
明大中野を見て、僕は「いい学校だ」と思った。それは今も変わらない。
しかし息子は、「自分には合わない」と言った。
一方、巣鴨を見て息子は、「ここはいい」と言う。
学校選びというのは、結局こういうものなのかもしれない。
いい学校と、わが子に合う学校は必ずしも同じではない。
そして今のところ我が家は、その息子の感覚を尊重したいと思っている。
2月2日。そして場合によっては2月4日。
我が家の気持ちは、今のところ明大中野よりも巣鴨に傾いている。
ただ、それは明大中野の評価が下がったからではない。
いろいろな学校を実際に見た結果、少しずつ「息子に合う学校」が見えてきた。
ただ、それだけなのである。
中学受験の学校見学には、きっとそういう意味もあるのだと思う。

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