第一志望校の受験日まで、あと140日。
ここまで来ると、もう勉強そのものより、家族全体で受験を回している感覚のほうが強い。
SAPIXに行って、SS特訓があって、NNもある。過去問もやる。必要に応じて個別塾にもお願いする。
そんな生活を続けていて、ふと思った。
もし妻も僕と同じようにフルタイムで働いていたら、うちは中学受験をしていただろうか。
微妙である。
本人が「やりたい」と言えば、たぶんやらせていたと思う。
ただ、少なくとも今と同じ形では無理だった気がする。
受験は勉強だけではない
中学受験を始める前から、それなりに覚悟はしていた。
親も大変だろうなとは思っていたし、小6になれば土日も勉強中心になることも想像していた。
実際、その通りになった。
というより、想像以上だった。
ただ、やってみて分かったのは、大変なのは勉強を教えることだけではないということである。
むしろ「管理」が大きい。
テストがあれば丸付けをする。
教材の進捗を見る。
模試や講習を申し込む。
学校説明会や文化祭の日程を調べて予約する。
塾の先生と話す。
そして小6の後半になれば、通常のSAPIXだけではなく、SS特訓やNN、個別塾なども入ってくる。
何を追加するのか。
何をやめるのか。
今の息子には何が足りないのか。
考えることがどんどん増えていく。
さらに受験とは直接関係ないが、お弁当も作らなければならないし、下の娘のこともある。
受験生が一人いるからといって、家族全員の生活が止まるわけではない。
こうして書き出してみると、中学受験というのはなかなかのプロジェクトである。
我が家は適材適所
我が家では、かなり役割分担している。
妻は勉強の進捗管理をする。
丸付けもする。
塾の先生とも話す。
説明会や文化祭などの情報も調べる。
ママ友から入ってくる情報も結構大きい。
一方、僕はというと、勉強についてはそれほど見られていない。
以前は算数を見ることもあったが、仕事もあるし、正直なところ、受験算数をずっと教え続けられるほどの能力も時間もない。
だから僕は、基本的には稼ぐことに徹する。
これについて後ろめたさはまったくない。
適材適所である。
妻が受験生活を管理する。
僕は仕事をする。
そして必要なところにはお金を使う。
そのほうが我が家にとっては効率がいい。
課金はやっぱり強い
中学受験をしていて思う。
やっぱり課金は強い。
身も蓋もない話だが、これはかなり実感している。
我が家ではSAPIXに加えてSS特訓があり、NNも始めた。
個別塾にもお願いしている。
僕自身が息子にすべてを教えられるなら、それが一番安いのかもしれない。
でも、できないものは仕方ない。
そこはプロにお願いする。
お金を払うことで、親ができない部分を補ってもらえる。
そして「お金で時間を買う」という意味では、塾以上に実感するのが食事だったりする。
自炊したほうが安い。
そんなことは分かっている。
でも、受験生活をしていると、土日も塾や模試、学校説明会などで動く。
疲れて帰ってきて、そこから食事を作る。
その時間があるなら、外で食べてしまう。
スーパーやコンビニで好きなものを買う日があってもいい。
我が家は外食もかなり多い。
時間は有限である。
数千円で家族の1時間を買えるのであれば、受験期間中はそれもありだと思っている。
共働き家庭は不利なのか
では、夫婦2人ともフルタイムで働いている家庭は、中学受験には不利なのだろうか。
なんとなく僕は、
「父親がフルタイムで働いて、母親が専業主婦かパート」
という家庭のほうが中学受験には向いているイメージを持っていた。
ところが、データを調べてみると、そう単純でもない。
2023年に発表された首都圏の小学6年生保護者を対象とした研究では、中学受験をした家庭397人と、受験しなかった家庭397人を比較している。
その調査では、受験家庭の母親でフルタイム勤務だった割合は29.22%。
一方、非受験家庭では17.63%だった。
つまり、この調査ではむしろ中学受験家庭のほうが母親のフルタイム勤務率が高かったのである。
もちろん、この数字だけを見て、
「フルタイム共働きのほうが中学受験に向いている」
とは言えない。
受験家庭と非受験家庭を同数程度集めて比較した調査なので、これをそのまま日本全体の中学受験家庭の割合として見ることもできない。
それでも、少なくとも、
「母親がフルタイムなら中学受験は難しい」
という単純な話ではなさそうである。
ベネッセ教育総合研究所が首都圏の小学3〜6年生の保護者5,256人を対象に行った調査でも似た傾向が出ている。
母親が常勤だった割合は、
中学受験をさせる予定の家庭で22.7%。
受験させない予定の家庭では14.4%だった。
こちらは2012年と少し古いデータだが、方向性としては興味深い。
フルタイムで働きながら、中学受験をしている家庭は普通にあるのである。
収入か、それとも時間か
考えてみれば、これは当然なのかもしれない。
中学受験にはお金がかかる。
塾代だけではない。
模試、講習、個別指導、受験料、交通費。
そして我が家のように「時間を買う」ための外食まで含めれば、いろいろなところでお金が出ていく。
もし妻が妊娠を機に仕事を辞めず、そのままフルタイムで働いていたらどうだっただろう。
おそらく年収600万円くらいはあったと思う。
年間600万円。
これは大きい。
それだけあれば、中学受験への課金力は間違いなく上がる。
個別指導を増やすこともできる。
家庭教師をお願いすることもできる。
食事ももっと外に頼める。
家事だって外注できる。
そう考えると、
「フルタイム共働きのほうが中学受験には有利なのでは?」
とも思えてくる。
しかし、そんな単純な話でもない。
妻が600万円を稼ぐ代わりに失われるものがある。
時間である。
お金で買えないもの
ここが難しい。
お金があれば、かなりのものを買える。
勉強は塾にお願いできる。
個別指導もある。
家庭教師もいる。
食事も買える。
家事だってある程度は外注できる。
だから僕は、中学受験においてお金はかなり強いと思っている。
でも、どうしても買えないものがある。
息子との会話である。
「今日のテストどうだった?」
「何点だった?」
「過去問どうだった?」
「この学校どう思った?」
そんな何でもない会話である。
塾の先生が同じことを聞くことはできる。
家庭教師だって相談に乗ってくれるだろう。
でも、それとは少し違う。
親が自分の受験を見ている。
家族が一緒に受験に向かっている。
その感覚が、息子にとっては結構大事なのではないかと思う。
親は教えなくてもいい
僕自身は、息子に勉強をほとんど教えていない。
本当は教えられたらいいと思う。
でも、仕事をしながら難関中学の受験問題を理解して、それを息子に分かりやすく教える。
僕にはなかなか難しい。
だったら外部にお願いすればいい。
個別塾でもいい。
NNでもいい。
SAPIXの先生でもいい。
その道のプロにお願いしたほうが効率がいい。
親が何でもやる必要はないと思っている。
妻は進捗を見る。
僕は稼ぐ。
教えるところはプロにお願いする。
適材適所である。
それでも親は見ている
ただし、「教えない」と「見ない」は違う。
ここは、中学受験をやってみて強く感じるようになった。
テストを受ければ点数が気になる。
過去問をやれば、
「どうだった?」
と聞く。
偏差値が上がれば家族で喜ぶ。
下がれば、まあ、そんな日もある。
学校説明会や文化祭へ行けば、
「ここ、どうだった?」
と息子と話す。
常に息子の受験を家族が見ている。
受験に伴走している感覚。
これが結構大事なのだと思う。
小学生が一人で何年間も受験勉強を続けるのは、やっぱり大変である。
誰かが見ている。
誰かが結果を気にしている。
誰かが一緒に喜んでくれる。
それがあるから、子どもも頑張れる部分があるのではないだろうか。
中学受験で最後まで親に残る仕事は、案外「勉強を教えること」ではなく、
「ちゃんと見ていること」
なのかもしれない。
今と同じ形では無理
では最初の問いに戻る。
もし夫婦2人ともフルタイムだったら、我が家は中学受験をしていただろうか。
やっぱり微妙である。
妻も僕と同じような働き方をしていたら、今のように丸付けをしたり、進捗を管理したり、塾の先生と話したりする時間はかなり減っていただろう。
一方で、世帯収入は増える。
その分、個別指導や家庭教師、外食、家事などにもっとお金を使えたかもしれない。
だから、
フルタイム共働きだから中学受験ができない、とはまったく思わない。
本人がやりたいと言ったら、我が家もたぶんやらせていたと思う。
ただし、
今と同じ形では無理だった。
もっと人に頼っていたと思う。
もっと外食していたと思う。
もっとお金で時間を買っていたと思う。
そして、それでいい。
中学受験は家族で伴走
中学受験を始める前は、もっと単純に考えていた。
塾に行って、勉強して、試験を受ける。
もちろん主役は子どもである。
それは今でも変わらない。
でも実際にやってみると、その周りで家族もずっと走っている。
妻には本当に感謝している。
勉強の進捗管理だけではない。
塾とのやり取り、申し込み、説明会、文化祭、ママ友からの情報収集、お弁当。
そして下の娘の生活もある。
僕は僕で仕事をする。
必要ならお金を使う。
そして息子のテストの点数を気にする。
家族それぞれが、自分のできることをやっている。
だから結局、中学受験に必要なのは「お金か時間か」という二択ではないのだと思う。
お金も必要。
時間も必要。
そして、それぞれの家庭に合った役割分担も必要である。
お金を使えば、親の時間はかなり買える。
でも、全部は買えない。
息子と話す時間。
テストの点数を一緒に見る時間。
合格したい学校について話す時間。
そして、
「家族が自分の受験を見てくれている」
という感覚。
これは最後まで外注できない。
中学受験で親がやるべきことは、必ずしも勉強を教えることではない。
子どもの受験を、ちゃんと見ていること。
今のところ、僕はそれでいいと思っている

コメント