中学受験本番まで、あと141日。
今回紹介するのは、安浪京子さんの『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策』である。
実はこの本、買ったのは半年ほど前。
その後も何度かパラパラと読み返していたのだが、最近ちょうど過去問について考えることが増えてきたので、
「そういえば、この本の過去問の章をもう一度読んでおこう」
と思って開いた。
……はずだった。
ところが、気づけば最初から最後まで一気に読んでしまった(笑)。
そして改めて思った。
やっぱり、この本はかなりいい。
志望校の選び方、校風との相性、過去問との相性、秋以降の勉強、受験日程、そして最後は受験を終えた子どもに親がどう向き合うか。
中学受験の「いろは」が、かなり実践的に詰まっている。
しかも面白いのは、読む時期によって刺さるところが変わることである。
半年前に読んだときと、受験まであと141日となった今では、同じページでも見え方がまったく違う。
今回は、この本を読み直して改めて勉強になったところを、現在進行形のわが家の中学受験と照らし合わせながらまとめておきたい。
校風マトリックス
まず「これは面白いな」と思ったのが、校風をマトリックスで整理して考えるという視点である。
これまでわが家でも、学校説明会や文化祭にはそれなりに足を運んできた。
もちろん偏差値や大学進学実績、通学時間なども見る。
ただ、実際に学校へ行ってみると、それだけでは説明できないものがある。
「なんとなく、この学校いいな」
という感覚である。
そして面白いことに、息子が「ここはいい」と感じる学校を振り返ると、どうも一定の傾向がある。
どちらかというと、細かく管理される学校よりも、生徒の自主性を重んじる学校のほうが好きらしい。
たとえば、今第一志望として考えている早大学院もそうである。
これまでいろいろな学校を見てきたが、本人が好印象を持つ学校には、比較的自由で、自分で考えて動くことを求められる雰囲気を感じることが多かった。
もちろん、校風なんて単純に二軸で分類できるものではない。
実際に入学してみないと分からないことも、山ほどあるだろう。
それでも、このマトリックスを見ながらこれまで訪問した学校を思い返すと、
「ああ、息子はこういう学校が好きなのかもしれないな」
と、今まで何となく感じていたものが少し言語化された。
偏差値、順位、クラス。
中学受験ではどうしても数字ばかり見てしまう。
まあ、親としては仕方がない。
でも、6年間を過ごす学校である。
「本人がこの学校で楽しく過ごせそうか」
という軸も、やはり大事なのだと思う。

第一志望は少し背伸び
次に印象に残ったのが、第一志望は少し背伸びするくらいでもいいという考え方である。
ここで出てきたのが、いわゆる「ノミの天井」の話。
ノミは、自分より低いフタのある箱に入れられると、その高さまでしか跳ばなくなる。そしてフタを外したあとも、その高さ以上には跳ばなくなる――という有名な話である。
もちろん、中学受験をそのままノミの話に当てはめるのは少し乱暴かもしれない。
ただ、
「この子はこのくらい」
「今の偏差値ならここまで」
と、親のほうが先に天井を決めてしまうことは、確かにあるのかもしれないと思った。
わが家の第一志望も、今のところは少し背伸びをしないと届かない位置にある。
模試の判定を見れば、不安になるのは当然である。
それでも、
「今の数字だけで、もう無理と決める必要はないよな」
とも思う。
この話、仕事でも同じだなと思った。
最初から「このくらいまで」と枠を作ってしまえば、本人もその中でしか動かなくなる。
少し高い目標があるからこそ、今までならやらなかった工夫や努力が出てくることもある。
もちろん、何でも高ければいいわけではない。
背伸びと無謀は違う。
第一志望を高く持つことと、受験校を全部チャレンジ校にすることも別の話である。
親が勝手に天井を下げない。
でも、受験全体は冷静に組み立てる。
このバランスは、かなり大事なのだと思う。

過去問との相性
そして今回、特に印象に残ったのが、子どもと過去問との相性という考え方である。
志望校を考えるとき、どうしても偏差値を見る。
もちろん大事な指標である。
ただ、学校によって問題の出し方はかなり違う。
じっくり考える問題が多い学校もあれば、短時間でどんどん処理する力を求める学校もある。
記述が多い学校もあれば、テンポよく答えを出していく学校もある。
つまり、同じくらいの偏差値でも、本人にとって点が取りやすい学校と取りにくい学校があるということになる。
逆に言えば、
「偏差値が少し足りない=無理」
とも限らない。
問題との相性がよければ、思った以上に戦えることもある。
一方で、偏差値的には十分届いていても、出題形式が本人の苦手なタイプなら苦戦することもあるだろう。
だからこそ、やっぱり過去問を解いてみないと分からない。
見るべきなのは、
「何点だったか」
だけではない。
- なぜ取れたのか。
- なぜ落としたのか。
- この学校の問題で、本人の強みが出ているのか。
そこまで見ていく必要があるのだと思う。
志望校選びは、
偏差値 × 校風 × 過去問との相性
この3つで見ると、かなり見え方が変わってくる。

過去問はこう使う
今回、この本を読み直そうと思ったきっかけは、まさに過去問の章である。
そして、やっぱりここはかなり勉強になった。
過去問というと、
「何年分やるか」
「何点取れたか」
に目が行きがちである。
でも、この本ではもう一歩踏み込んで、過去問を使ってどう本番に近づいていくかがかなり具体的に書かれている。
過去問を解く。
できなかったところを見る。
出題傾向を知る。
弱点を洗い出す。
そこを補強する。
そして、もう一度本番を想定して解く。
結局、これを繰り返すしかない。
過去問で鍛える
個人的には、この感覚が一番しっくりきた。
過去問は点数を確認するものではなく、本番で合格点を取るために自分を調整する材料である。
点数が悪かったら、
「ダメだった」
で終わるのではなく、
「どこを直せば伸びるのか」
を見る。
逆に点数がよかったとしても、
「本番でも再現できるのか」
を見る。
このあたりは、仕事の改善活動にも近いなと思った。
一回の結果だけを見るのではなく、再現できるやり方に変えていく。
受験も結局そこなのだろう。
○△×で問題を選ぶ
過去問の章で、もう一つ面白かったのが問題の選別眼である。
本書では、テストが始まったら短時間で問題を見て、
○:解けそうな問題
△:やってみないと分からない問題
×:難しい問題
のように分類する考え方が紹介されている。
基本は、
○から解く。
次に△。
×には安易に手を出さない。
これ、ものすごく大事だと思う。
難しい1問に10分、15分使ってしまい、そのせいで後ろにある取れる問題を落としたら意味がない。
入試は、
「一番難しい問題を解いた人が勝ち」
ではない。
「合格点を取った人が勝ち」
である。
当たり前なのだが、本番になるとこれが難しいのだろう。
今取り組んでいるNNやSS特訓でも、結局こういう力を鍛えているのだと思う。
全部解こうとしない。
自分が取るべき問題を見つけて、そこを確実に取る。
そして残った時間で△に挑戦する。
過去問演習は、単なる勉強ではなく、かなり本番に近い試合形式の練習なのだと思う。
頻出分野ノート
もう一つ面白かったのが、過去問から頻出分野を拾って、自分専用のノートを作るという方法である。
過去問を何年分か解いていけば、よく出る分野や、何度も間違える分野が見えてくる。
そこで新しい問題集を買うのではなく、今まで使ってきた塾のテキストに戻る。
該当する問題を探してコピーする。
ノートに貼る。
もう一度解く。
そして、本人にも注意点を書き込ませる。
このノートを、最後は入試直前の見直しに使う。
とても合理的だと思う。
受験が近づくと、どうしても新しい問題集に手を出したくなる。
でも時間は限られている。
それなら、
「新しい問題を増やす」より、「一度できなかった問題をできるようにする」
ほうが効率はいい。
妻はすでにやっていた
ここを読んでいて、
「あれ、これうちでもやってるじゃん」
と思った。
妻が、息子のできなかった問題を別ノートにまとめている。
私は横で見ていただけだったのだが、おそらく塾でもこういう指導を受けているのだろう。
本を読んで、
「なるほど、こういう狙いだったのか」
とようやく理解した(笑)。
算数しか見ていない父としては、こういうところで後追いで理解することが多い。
合格判定40%
ここも、今のわが家にはかなり刺さった。
本書では、入試3か月前くらいの時点で、合格判定40%程度でも悲観しすぎる必要はないという趣旨の話が出てくる。
親としては当然、80%とか50%以上とか、安心できる数字が欲しい。
40%と出れば、
「このまま第一志望を目指して大丈夫なのか」
と不安になる。
まあ、そりゃそうである。
一方で、本書では、この時期にあまりに高い判定が出ることで、子どもが慢心する可能性にも触れられていた。
なるほど、そういう見方もあるのかと思った。
もちろん、
「40%なら大丈夫」
という話ではない。
ただ、その数字はあくまでその時点での現在地である。
そこから過去問をやり、弱点を潰し、問題の選別眼を鍛えていく。
40%=安心ではない。
でも、40%=終わりでもない。
このくらいの捉え方がいいのだと思う。
親が数字を見て先に天井を作らないこと。
今の位置を冷静に見ながら、
「残り141日で何を変えられるか」
を考える。
今のわが家には、少し勇気をもらえる話であった。
秋から見る数字を変える
もう一つ、「確かにそうだな」と思ったのが、6年生の秋以降は塾のクラスの上下を必要以上に気にしないという考え方である。
中学受験をしていると、クラスは気になる。
上がった。
下がった。
偏差値が上がった。
下がった。
親としても一喜一憂してしまう。
でも、秋以降は見るものを少し変えなければならないのだろう。
最終目的は、
塾で上のクラスにいることではない。
第一志望の入試で合格点を取ること。
つまり、
「クラスを上げる勉強」から「志望校に受かるための勉強」へ。
ここはかなり腑に落ちた。
過去問を解き、志望校の出題傾向を知る。
自分の弱点を知る。
取るべき問題を見極める。
足りない部分を重点的に埋める。
今取り組んでいるNNやSS特訓も、そのためにあるのだろう。
秋以降は、
「塾の中で自分がどこにいるか」ではなく、「志望校まであとどれくらいなのか」
を見る。
親のほうも、そろそろそういう見方に切り替えないといけないのだと思う。
受験日程を考え直す
第6章の受験スケジュールも、わが家にはかなり刺さった。
実は最近、
「もう安全校はなくてもいいんじゃないか。行きたい学校だけ受ければいいのでは」
という話もしていた。
しかし、この本を読んで、それは少し考え直した。
大事なのは、早い段階で一つでも合格を取っておくことである。
最初からチャレンジ校を並べて、不合格が続いたあとに最後の最後で合格可能性の高い学校を置く。
それよりも、早めに一つ合格を取り、
「自分は受かった」
という状態で本命に挑むほうが、精神的にも余裕がある。
これは確かにそうだと思う。
わが家の場合も、1月校では栄東や開智なども含めて、まず一つ合格を取りにいく組み方を考えたい。
そして2月1日以降も、第一志望へのチャレンジだけで固めず、
「合格可能性が比較的高く、実際に進学することになっても納得できる学校」
を一つは入れておきたい。
昨日見に行った成城中学や、現在検討している世田谷学園なども、そういう視点でもう一度考えてみたい。
大事なのは、
「最後に滑り止めを置く」
ことではない。
「早めに合格を取って、安心して本命に挑める日程を作る」
という考え方なのだと思う。

1校合格はやはり大事
そして最後の章。
ここはかなり胸に刺さった。
「1校合格」と「全滅」は天と地の差。
第一志望に挑戦することは大事である。
少し背伸びをした学校を目指すことにも意味がある。
でもその一方で、少なくとも1校は合格を手にする受験日程を組むことも、親の大事な役割なのだと思った。
どれだけ頑張っても一つも合格が取れず、
「頑張ってもどうせダメなんだ」
と子どもが思ってしまったら、あまりにもつらい。
中学受験は人生のゴールではない。
第一志望に合格したかどうかだけで、その受験の価値が決まるわけでもない。
むしろ、
「努力したら前に進めた」
「自分にもできることがある」
「次も頑張ってみよう」
と思える経験にできるかどうか。
長い目で見れば、そちらのほうが大事なのかもしれない。
だからこそ、
第一志望の天井は下げない。
でも、少なくとも1校はしっかり合格を取りにいく。
この二つは両立させたい。
親の最後の役割
そして、何よりここが一番胸に刺さった。
受験結果がどうであっても、最後に親がやるべきことは、
子どもが新しい気持ちで中学校生活へ向かえるように背中を押すこと。
という話である。
中学受験が終わったら、その先には中学校生活がある。
高校もある。
大学もある。
その先の人生はもっと長い。
だから、第一志望に合格したかどうかだけで、子どもの頑張りを評価してはいけないのだと思う。
受験が終わったあと、
「あの受験をしてよかった」
と本人が思えるようにする。
それが、中学受験生の親として最後の仕事なのかもしれない。
この本は誰におすすめ?
改めて読み直してみて、やはりこの本はかなりいいと思った。
特におすすめしたいのは、4〜5年生、なかでも5年生くらいの子どもがいる家庭である。
初めて中学受験をする家庭では、
いつから過去問をやるのか。
模試をどう見るのか。
志望校をどう組み合わせるのか。
秋以降に何をするのか。
こういった中学受験の「定石」が、そもそもよく分からない。
この本を一度読んでおくと、
「なるほど、中学受験ってこういう流れなのか」
という全体像がつかみやすいと思う。
そして、この本は一度読んで終わりではない。
4年生で読むのと、5年生で読むのと、6年生の秋に読むのとでは、おそらく引っかかる場所が違う。
実際、半年前に読んだときよりも、今のほうがはるかに刺さった。
これは、受験が終わるまで本棚に置いて、ときどき読み返したい一冊である。
第一志望は下げない
今回この本を読み直して、改めて思ったことはシンプルである。
偏差値だけで、子どもの可能性を決めない。
校風との相性も見る。
過去問との相性も見る。
そして秋以降は、塾のクラスではなく、
「第一志望でどうやって合格点を取るか」
に集中する。
一方で、受験日程まで無謀にする必要はない。
第一志望には思い切って挑戦する。
でも、少なくとも一つはしっかり合格を取りにいく。
第一志望の天井は下げない。
でも、受験全体は冷静に組み立てる。
今のわが家には、このバランスが一番大事なのだと思う。
そして受験が終わったとき、
第一志望の結果がどうであったとしても、
「あの受験をしてよかった」
と息子自身が思って、新しい中学校生活へ進んでくれればいい。
結局、親として最後にやるべきことは、そこなのだろう。

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